Saturday, 7 November 2009

神山町 AIR 2009

1999年に始まった、徳島県神山町のアーティスト・イン・レジデンス。
毎年3名のアーティストを国内外から選考し、神山町でしか制作することのできない作品を約2ヶ月の滞在期間の間に制作してもらう。2009年の滞在作家は、スベトラーナ・ガーボヴァ、キャメロン・ホッキンソン、水谷一、山中カメラの4名。

11月3日 - 8日 

参加作家たちの展覧会が開催された。


徳島県神山町の深い緑の谷は美しく、神山町アーティスト・イン・レジデンスを運営するNPO法人グリーンバレーの名前の由来であることを感じさせる。











"事象" 水谷 一
2009
劇場寄井座
356×356cm, 鉛筆・紙






作家自身が作品設置場所を選定し、劇場寄井座の掃除に時間をかけた。レジデンスの始まった当初には、劇場は暑く、しかし、夜になると気温はぐっと冷え込むこの場所で、約2ヶ月間にわたり、作品は制作された。様々な濃さの緻密な鉛筆の線で、3.65m 四方の紙は、表面に鉛筆の圧で歪みができるほどに描かれている。

"事象" は、寄井座の80年の歴史の推移を感じさせる空間の中で、その劇場の歴史の濃度に決して劣ることのない存在感を放つ。

劇場の小さな格子天井に描かれた色とりどりの沢山の広告の四角。
薄く、しかし、大きな紙にモノトーンで描かれた "事象"。
舞台には、大きな、飴色の円形。





"日本の詩情" Svetlana Gabova
2009
下分アトリエ
226×100cm, アクリル・キャンバス




ロシアから神山へ招待されたガーボヴァは、日本語をあまりしゃべることができなかったという。英語での会話も難しく、その約2ヶ月の滞在では、困難な状況も起こっただろうと想像される。しかし、言語というひとつの社会的記号が遮断された状況にのみ、実感できることがある。

キャンバスに使用された正方形は、ガーボヴァが神山町で神社仏閣、至る所で目にした象徴的な形だった。彼女が制作していたアトリエの色とりどりの窓も、彼女の作品にインスピレーションを与えたことが伺える。四角に区切られた画面には、彼女が滞在期間に心を動かされた神山町のたくさんの視覚的記号が描かれている。漢字もまた、象形文字のルーツを辿るものもあり、「絵」である。日本人にとっては、些細な日常の要素「漢字・おもちゃ・景色」を、この国の言語を理解できない一人の画家が、彼女自身の解釈を加えながら描いたその画面は、鑑賞者に「別の視点」を与える。



"かぐや姫の昇天 Cammeron Hockenson"
2009
鮎喰川の竹林 (下分 栗生野地区・ 栗生野橋東側)
30×12×6m, 竹・縄・ワイヤー










"わら・山・川" Cammeron Hockenson
2009
438号沿いの田んぼ (神領 本野間・JA神山支所付近)
12×4.5×2.7m, 稲わら






"無題" Cammeron Hockenson
2009
上角谷川岸の田んぼ (神領 大久保地区・ 乳イチョウ付近)
5×2×6m, 日本杉







"ハザード・ケルン:駐車禁止" Cammeron Hockenson
2009
神山町農村環境改善センター駐車場
2×2×3.6m, (取り壊した駐車場の)アスファルト片




神山町の方のお話によると、"ハザード・ケルン:駐車禁止"は、「いつのまにか作られていた」という。農村環境改善センターには現在、新しいアスファルトの立派な駐車場がある。作品は、以前そこにあった古い駐車場のアスファルトで制作されている。このオブジェは、交通標識の赤い三角コーンを模してるだけではなく、産業廃棄物でありながら、古くから人類が建造してきた道標や建造物を連想させる。

キャメロン・ホッキンソンは、神山町滞在の間に4作品を制作した。一つ一つの作品に、彼の確実な技術、そして、日本・神山滞在の経験が色濃く反映されている。作家は、神山町滞在を心より楽しんでいるように、彼の視点で、これだけの数の作品を楽しみながら制作したのだろう。


"神山スダチ音頭" 山中 カメラ
2009
下分小学校グラウンド
インスタレーション, スダチコンテナ・電球・TVモニタ・DVDプレイヤー、スピーカー






神山スダチ音頭に楽しく参加させていただいたため、踊りの写真、映像はありませんが、Youtube より、下の映像をお借りいたしました。




山中カメラは、その神山滞在中に、住民と交流しながら、神山スダチ音頭の作詞、作曲、振り付けを構想した。演奏、合いの手を入れる声は、神山町の住民の方々が担当し、今年 KAIR に参加した作家たちの声もミックスされている。「スダチ=巣立ち」とかけられたその音頭は、神山の自然と、そこで育まれる子供たちの巣立ち、そしてまた戻ってくる様子を歌っている。

11月3日のインスタレーションの電球は煩悩の数、108つの倍、216個用意され、それらが、スダチのコンテナの中で暖かい明かりを点していた。寒波の寒い夜、UFOでも下りてきそうな不思議な空間の中、神山町の人々と、神山の魅力に惹かれて集まってきた人々が、輪(=和)になり、スダチ音頭を楽しんだ。


神山町AIR2009 の作品は、11月8日まで展示されているが、期間が終わった後も、過去10年のAIRの作品とともに、公開されている作品は多数あり、神山町を訪れた人は、KAIR の11年の間に制作された作品を楽しむことができる。


〈参考URL〉

神山町アーティストインレジデンス
http://www.in-kamiyama.jp/


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2 comments:

  1. かぐや姫のとこの丸いやついいねえ。
    ほしいわ。

    こういうイベントっていいよねえ。
    そこの土地に眠るインヴィジブルなものを
    いろんな面から掘り起こすような。。。

    アートに始まり、何かに繋がればいいなあと
    いつもこういうのを見て形にならない思いが
    沸くんだけどね。

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  2. >soperga さん

    やっぱり、丸いやつはお茶に使うんかな。

    インヴィジブルなものを掘り起こす、というか、第三者に伝わる
    可視的なものを作り出すのがアートの本質のひとつでしょうか?

    ではでは、選びつつ、考えつつ、どうにかこうにか繋げていきましょう。。
    とりとめのない話ではあるけど。

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