Saturday, 15 August 2009

君が泣くから、僕は歌う

最近、聴いている Beirut は、アメリカのニューメキシコ州出身の若いアーティスト。
東欧での滞在をもとに、自分で作曲した音楽は、若干 21 才とは思えないほどの郷愁にあふれるようなメロディー。

Beirut の La llorona という曲がある。
Llorona(ジョロナ)とはもともと、スペイン語で、直訳すると「泣き女」。メキシコには、この「ジョロナ」の伝説や唄がある。Beirut の「ジョロナ」は、全く独自のメロディーで、しかもアニメーションが素朴でいい味なので、うっとりと観てしまう。






サボテンのあるメキシコっぽい風景の映像。
Youtube のコメントを読んでいても、メキシコ人の中にも、グローバリゼーションで、メキシコ文化が異なる形で他の国に人々にアレンジされ、享受されているのを喜んでいる人が多いらしいのが伺える。



「ジョロナ」の起源やその説にはいろいろあるけれど、共通認識として知られているのは、夜中に、泣きながら、叫びながら、誰かを探して道をふらふらしている女性の霊の伝説。


こちらは、映画「フリーダ」(2002年)のワンシーン。




夫ディエゴとの生活に苦悩するフリーダの前に、老婆が現れて、突然「ジョロナ」を唄いだす。こわい。。。
この映画の中の老婆は「死」の象徴なので、映像の最後に、メキシコに亡命したトロツキーが暗殺されるシーンが入る。



この映画で唄われている「ジョロナ」が、メキシコで一般的によく知られているジョロナの歌で、Beirut のものとは、けっこう違う。歌詞も、人生に絶望して、ジョロナに語りかけている女性の独白のような印象で、けっこう暗い。この映画は、私がメキシコに留学前に観たので、実際に暮らす前のメキシコのイメージに影響しているかも。


歌詞を日本語に訳そうと思ったけれど、詩の訳は難しいので、スペイン語で抜粋。


Si porque te quiero quieres, Llorona
Quieres que te quieres más
Si ya te he dado la vida, Llorona
¿Qué mas quieres?
¿Quieres más?





Manu Chao は、英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語で歌ったりして、色々な国で大人気のあアーティスト。
歌の後半部分に、「ジョロナ」が女性の声で入る。Manu Chao は、音のアレンジ、組み合わせが面白いので、ジョロナの歌も効果的に挿入されている。歌の主題は「この世のものはすべて嘘」、挿入されるジョロナが哀しくも大げさな歌で、最後に「環境問題なんてどうでもいいじゃないか」といちゃつきながら話すカップルの声。


「ジョロナ」の伝説、というか、その起源には色々とあるらしい。
スペイン人に植民地化される前のメキシコで、ジョロナというのは「チウァコアトル」という女神だったという説がある。チウァトアトルは、優美な白い服を着て夜に現れ、唸ったり、叫んだりしていたという。彼女の額には、角が生えていたとか。。そのほかにも、ジョロナは、メキシコを征服したスペイン人コルテスの妾となったマリンチェという説もある。

夜中に泣きながら叫びながら彷徨っている女性が、結婚式の前夜に死んでしまい、その夫となるべき人を探しているとか、亡くなった子どもを探しているとか、夫の不在中に死んでしまった女性がその夫にお別れのキスをするために探しているとか、無実の罪で嫉妬深い夫に殺された女性がその無実を訴えて歩いているとか。。。



ジョロナの画像を検索していると、アメリカ人の刺繍を使って作品を作るアーティストの作品に遭遇しました。


"La Llorona" ©2005 Jenny Hart - collection of the artist


最後に、メキシコ人監督による、パペットアニメーションをご紹介。
色っぽいガイコツが、ひなびた酒場で「ジョロナ」を歌っているシーン。





レネ・カスティージョという監督の「Hasta los Huesos」(直訳:骨まで)という映画のワンシーンのようです。
ストップモーション好きの方は、完全バージョンもどうぞ。





参照ページ
http://www.sep.gob.mx/work/appsite/muro/leyendas/llorona.htm

4 comments:

  1. Chavela Vargas!!あの映画に出てたんですね。
    Cafe Tacubaが尊敬してる人なんで、名前だけ知ってました。

    こんなインタビューみつけました。
    http://www.espectador.com/text/clt03142.htm
    フリーダのあの青い家で一緒に暮らしていたことがあるとか。トロツキーもディエゴも知り合い。おもしろいですねー。生きる伝説!

    ReplyDelete
  2. Chavelaって、やっぱりそんなに有名な人なんですよね?
    彼女が Llorona の作詞・作曲をしたのかしら??

    フリーダの映画に出ているあの人が、あの家に住んでたなんて、あらまあ、すごい~

    インタビュー記事リンクありがとう。ところが、時間がなくてまだ読めてません。(スペイン語だし時間かかるし。。)

    ReplyDelete
  3. Cuentan que esta mujer era la diosa Cihuacóatl, quien aparecía advirtiendo a sus hijos los aztecas sobre la caída del imperio azteca...
    Durante la conquista otros hablaron sobre una joven enamorada que había muerto un día antes de casarse y traía al novio la corona de rosas que nunca llegó a ceñirse; otras veces era la viuda que venía a llorarle a sus hijos huérfanos, o la esposa muerta en ausencia del marido a quien venía a darle el beso de despedida; o la desafortunada mujer, vilmente asesinada por el celoso marido apareciéndose para lamentar su triste fin y confesar su inocencia.

    Yo creo que es hermana de la Sandunga...
    http://www.youtube.com/watch?v=CV4Ot_fYRb4&feature=PlayList&p=E64E73614CE25DF6&index=0

    ReplyDelete
  4. Gracias por la canción de Lila Downs que me gusta mucho.

    Es hermana de Llorona?
    No había escuchado nada de Sandunga.

    ReplyDelete